薄毛治療におけるミノキシジル タブレット(内服薬)の問題点

美容外科では、様々な薬品類が使用されています。注射薬、外用薬(塗り薬)、内服薬(飲み薬)など、多種多様で、この中には、効果効能がハッキリとしていないもの、安全性の確認が不確かなもの等、問題があるものも多数含まれています。

薄毛治療においても同様で、その一つにミノキシジル タブレット(内服薬)があります。

ミノキシジルは、血管拡張作用があり、外用した場合、塗った部位の血行が改善し、その効果により薄毛の改善効果が確認されており、今でも薄毛治療の標準薬(塗り薬)として使用されています。

一方、ミノキシジル タブレット(内服薬)は、降圧剤(高血圧の薬)として開発された物で、その血管拡張作用から毛髪にも効くだろうとのことで、美容外科で薄毛の薬として使用されています。しかしながら、ミノキシジル タブレットの薄毛に対する効果・効能というのは、キッチリと調べられておらず、また、そもそも降圧剤なので、手軽に内服するような類の薬ではありません。実際、海外では、重度の合併症の報告も上がっておりますし、薄毛に対する効果及び内服薬のリスクについて、国内の治験なども行われておりません。もちろん未承認薬です。

先日、他院で薄毛治療を受けられた方を診察することがありました。その方は高血圧で、もともと降圧剤を内服していたにも関わらず、その薄毛治療クリニックでは、ミノキシジルタブレットを処方されていました。降圧剤を内服している方に降圧剤(ミノキシジルタブレット)を追加するには、非常に注意が必要です。ミノキシジルタブレットを処方する前に、降圧剤を出されている病院に、処方の旨を伝えて許可を得る必要がありますし、血圧の変動を生じる可能性について、患者様に説明する必要がありますが、薬についての注意もなく、血液検査や血圧の測定なども一切なかったようです。幸い、その方は、重度な合併症はありませんでしたが(薄毛の治療効果もなかったようです)、そのようなクリニックの安全性に対する考え方には、非常に疑問を感じざるをえません。後に、そのクリニックを受診された患者様を複数人診察する機会がありましたが、全ての方に同じように内服薬を出されており、何も考えずに処方されていることが分かります。

ミノキシジルタブレットを内服して、効果がある方もおられるかもしれません。しかし、実際、効果が見られなかっただけでなく、逆に多毛症(髪ではなく、体毛が濃くなる)で、相談を受けたこともあります。

一般に、日本では、健康保険診療において、認可を受けている薬以外は使用できないことになっているため、薬は安全な物ととらえがちです。本来、薬は効果効能をキッチリと調べ、合併症(特に重度の合併症)についても検証して、認可を受けてから処方されていると思いがちですが、日本の美容外科、美容皮膚科においては、未承認薬がよく使用されているため、残念ながら、そうではありません。

どの患者様にどの薬を使用するかは、一個人の医師の裁量権に任されているという現実があります。

これらのことも踏まえて、美容領域においては、医師選びやクリニック選びが、より重要と考えられます。

 

杉本 庸

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