シミの種類と治療指針(1)

前回、シミには様々な種類があり、治療法も様々ある旨を述べました。今回、代表的なシミとその治療法について述べたいと思います。尚、シミの治療法については、あくまで、記載をしている時点での私見であり、今後、変わっていく可能性もあります。

(1)日光性黒子(老人性色素斑)

(特徴)
 最も多く見られるシミで、基本的には、平坦、大きさは様々です。色調も濃淡も様々で、茶~黒、境界は比較的明瞭なことが多いですが、色調によっては分かりにくいこともあります。

(治療法)
 大きく、レーザー治療(光治療)と外用治療に分けられます。どちらも一長一短がありますが、一般には治療期間が短くてすむことからレーザー治療を行うことが多いです。

1)レーザー類

(Ⅰ)Qスイッチレーザー(ルビー、アレキサンドライト、ヤグ)

Qスイッチレーザーは、N(ナノ)秒という非常に短い時間内に照射するレーザーで、皮膚へのダメージが少なくてすむという特徴があるため、シミの治療によく用いられています。

レーザー照射後、照射部位は、痂皮化(薄いカサブタ)を生じ、2~3週間程度で落ちるというのが一般的な流れになります。合併症として色素沈着(シミ)を起こすことがあり、色素沈着を起こすと治療期間が長くなります。その予防のため、痂皮が落ちる間、軟膏を塗ったり、絆創膏でカバーしたりする必要があり、仕事をしている方や人前によく出る方、広範囲にシミがある方、などは治療が受けにくいという欠点があります。

(Ⅱ)光治療器/IPL(ライムライト、フォトフェイシャルなど)

光治療器は、Qスイッチレーザーほど、反応が起こらず、塗り薬や絆創膏などを貼らずにすむため、治療が受けやすいという利点があります。また、繰り返し治療を行うと、シミの改善だけでなく、肌のハリ、キメの改善、肌の赤みの改善など、様々な美肌効果が得られる利点もあります。

一方、反応が穏やかなため、1回ではシミが落ちきらず、繰り返しの治療が必要であったり、レーザーに比べ深達性が低いため、繰り返してもシミが落ちなかったりする場合があり、ある程度、適応は限られます。

ソバカスの場合は、レーザー治療を行った後、再発性が高く、また、広範囲なので、レーザー治療より手軽に出来るため、レーザーより光治療器の方を優先して行ってもよいと思います。

(Ⅲ)ピコレーザー

Qスイッチに比べてパルス幅(レーザー照射時間)をピコ秒にまで縮めたレーザーです。最新のレーザーということで、最近は、広告をよく目にしますが、今のところ、シミを落とす力は、Qスイッチレーザーと同程度(レーザーの深達性からやや劣るのではという意見もあります)と考えられています。今のところ、シミに対するレーザー治療の場合は、特にピコレーザーである必要はなく、Qスイッチレーザーで十分(あるいはQスイッチの方がシミを落とす力は強い)と考えられています。

正直、ピコレーザーをやたら宣伝している例を見ますが、怪しいものも多く、原理を考えても魔法ではなく、Qスイッチレーザーと比べて、シミに対しては効果に大きな差が無いと思われます。

2)外用治療(塗り薬の治療)

(Ⅰ)トレチノイン・ハイドロキノン療法(又は、オバジのZOスキンプログラム)

トレチノイン(ビタミンA類似体)には、肌のターンオーバーの亢進作用があり、それによってシミ(メラニン色素)の肌からの排出を促します。一方、ハイドロキノンは、メラニン細胞において、メラニン色素の生成を抑制します(つまり、シミを作らなくする)。これら2つの塗り薬を塗ることにより、シミの改善を行います。

この治療の利点は、トレチノインの作用により、肌の弾力性が増すため、シミの改善のみでなく、肌のキメやしわの改善も同時に行うことができるため、ZOスキンのように広範囲に行うと、アンチエイジングの対策にもなるということが挙げられます。

欠点は、塗ると肌の赤みやカサツキが強く起こり、また、少なくとも2ヵ月程度は行う必要があるため、人知れず行うということが無理なので、行うことが出来る人を選ぶ治療であることです。

(Ⅱ)ハイドロキノン、ビタミンC、トラネキサム酸など

塗り薬の中では、最も効果が優れており、安定的なことから、上記のハイドロキノンの外用がよく使われています。ただし、日光黒子に対して、単独で使用した場合、期待されるほどの効果は得られず、半年程度塗って、少し薄くなったかな?程度です。そのため、どちらかというと、他の治療との併用療法や後治療として使用することの方が多いです。

ビタミンCやトラネキサム酸の外用は、ハイドロキノンに比べると、効果は落ちるため、シミの治療というより、ハイドロキノンが使用できない方(かぶれなど)に用いたり、日常のスキンケア(悪化防止)として使用したりすることの方が多いと思います。

3)内服治療(飲み薬の治療)ビタミンC,E,トラネキサム酸

シミの内服治療としては、ビタミンC, E, トラネキサム酸の内服がよく使用されますが、老人斑に対する効果はそれ程高くなく、治療としての優先度は落ちると考えて差し支えないと思います。

個人的には、老人斑に対してならば、内服より外用を優先した方がよいと考えます。

(2)雀卵斑/そばかす

(特徴)
 幼少期頃より両頬に生じるシミで、一般に、小さく、多発して起こります。色調は茶色が主ですが、年齢と共に濃く、こげ茶色になります。基本的に遺伝(常染色体優性遺伝)となります。

(治療)
 日光性黒子に準じた治療になります。

1)レーザー類

レーザー類に対する反応は、一般によいのですが、再発性が高いところが、日光性黒子との違いになります。広範囲に及ぶこともあるため、ダウンタイムを考えると、レーザー治療がやや受けにくくなりますので、どちらかというと、光治療の方がお勧めしやすいです。ただし、ソバカスでも、日光性黒子と混ざっていたり、時間経過で日光性黒子様になっていたりする例では、光治療器では反応が乏しい場合もあり、Qスイッチレーザーが必要になることもあります。

2)外用治療

上記のトレチノイン・ハイドロキノン治療では改善が見られますが、ハイドロキノン単独では、それ程、効果は期待出来ないです。

3)内服治療

日光性黒子と同様で、内服薬のみの治療では、効果があまり期待出来ないです。

杉本 庸

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